わらべうた293.5 −耽る−


年齢制限R−18






重ねた唇はカサカサに乾いていた。いつからそうしていたかは知らないが、冬の夜風に晒されていたなら当然だろう。俺はその唇を舐め融かすような口付けを何度も繰り返した。
総司の目は潤んでいる。口付けのせいで息が上がっているのか、または心に負った傷のせいなのかはわからない。
(…どうしてお前ばかりが傷つくんだ)
俺は悔しさを感じた。
総司は介錯を自分から引き受けたのだという。迎えに行った大津で何があったのかは、総司は頑なに語ろうとはしないが、おそらく引き受けなければならないという使命感を持ったのだろう。
しかし、この介錯は今までのそれとは違う。まるで自分の体が引き裂かれるような痛みを味わったことだろう。だが、総司はそれを淡々とやってのけた。すべてが終わった後も感情を表にすることなく、粛々と終えた。
俺にはそれが、まるで空っぽになってしまったように見えた。
「ん…っ、ん…」
だからこうして息が上がって、身体が熱くなる総司を見て安堵した。
この痛みは、忘れなければならない。
俺たちはいつまでも悲しみに浸り、いつまでも俯いているわけにはいかない。だから、忘れなければならない。大切な人を、大切な人を殺したということを。
けれど、それは忘れたからと言って消えるものではない。だから忘れることに、罪悪感を持たなくてもいいんだ。
俺は総司の襟に手をかけて、その肌を晒す。そしてまるで獣のようにそれを貪った。あまり筋肉質でない身体はしなやかで細いが、そこにいつもよりも強く俺の噛み痕を残す。
いつもなら脱げなくなるから嫌だと、怒る総司も今はまるでもっとそうしてくれと言わんばかりに受け入れている。俺はやがて胸の赤い飾りを唇に含んだ。
「あぁ…っ」
女のようだから嫌だと文句を言っていたが、そこを啄むと総司の身体が弓のように撓る。それがまるで俺に押し付けるかのようで、俺はさらにそこを執拗に攻めた。
「あ…ん、あぁぁ…」
そうして総司が気を取られている間に、俺は素早く袴の紐を解きその奥に触れた。そこは既に高ぶり、小さく震えていた。
「歳三さん…っ」
「ああ…こうが、好きなんだろう」
「…っ!あっ、あっ…あぁ!」
強くそこを扱くと、総司は甲高い声を上げた。俺は指先で自分自身が気持ちよいと感じる所に触れた。すると総司は切なげに顔を顰めて
「そこ…っ、が…」
「いい、だろう」
俺が優しく促すと、総司は顔を真っ赤に染めて頷いた。
(そんなことはよく知っている…)
そしてそれは俺だけしか知らない。
俺の中にそんな優越感が芽生え、そしてまた俺自身の興奮も高まっていく。
(俺だけの…ものに)
したい。
これまで総司が嫌だと言うならば、と耐えてきた衝動が俺を襲う。刹那迷ったが、しかしもう止まることはなかった。
二本分の指を口に含み、十分に唾液で濡らす。総司は別の快感に酔って気が付いていないようだったが、その両足を広く広げさせて一番奥の場所を指で触れた。
「…ぁ…」
総司の身体がびくん、と揺れた。固い蕾がさらに頑なに閉じる。
「とし…」
「いいから、お前はこっちで気持ち良くなっていろ」
俺はそう言ってもう片方の手で総司の濡れそぼったそこをまた激しく扱いた。総司はがくがくと身体を揺らし、悲鳴に似た声を上げる。
そして俺は揺れた指をまず一本、その中にいれる。案外あっさりと受け入れたが、なかは思った以上に狭くて圧迫された。俺は狭いそこを押し上げるようにして広げていく。
(くそ…入るのか…?)
そう不安に思ったその時、
「ふぁあっ!」
と総司が声を上げた。俺が驚くと、総司自身も驚いたようで
「な、な…に…?」
と不安げに訊ねてくる。
男の中にも気持ちの良い場所があるようだ、と聞き知っていた俺は、それがここかと気が付いた。そして思い切って指をもう一本その中にいれて、その場所を集中的に攻めた。
すると総司はまた声を上げて善がった。
「あっあっ、いや、いやだ、とし…ぞ、さ…あっ、い…く…」
「いく…か?」
「嘘、ぁ、こん…な、あっ、あっ!」
自分自身の身体が信じられないのか、総司には快感を堪える感情とともにどうして、という疑問が混ざっていた。恥ずかしげに顔を逸らし、それでも声を漏らしてしまう総司が、俺には可愛くて仕方ない。
「いいから…いけ、何度でもいかせてやる」
「…っ!あ…!」
俺はさらに強くその奥を攻める。すると総司は身体の緊張を解いて、白濁としたものを吐き出した。そして力なく倒れこみ、荒い息で胸を上下させる。
俺はなかの指を引き抜いた。びくびくと痙攣するそこに、俺のものを入れたい、という男としての純粋な欲が湧き上がる。
(駄目だ…)
俺はなけなしの自制心を呼びさます。いま総司は混乱している。そんな時に繋がったって、俺が満足できたとしても総司はそうではないかもしれない。
「としぞ…さん」
すると総司が荒い息の中、俺の名前を呼ぶ。
「何だ」
「…歳三さんを…入れてください」
「総司…?」
まるで俺の心中を察したかのような申し出だ。聞き間違いかと疑いそうになったが、総司の表情は柔らかい。
「もう、大丈夫だから」
それは身体が、ということなのか。
それとも心が、ということなのか。
俺には判別がつかないが、それでも総司がそうしてほしいと言うのなら、俺には拒む理由はない。
「ああ…わかった」
俺はできるだけ平静に答え、そして総司の額に口付けた。無茶はしない、と約束するように。すると総司は穏やかに微笑んだ。
俺は総司が纏うものすべてを取り払い、また俺自身も脱ぎ捨てた。部屋は冬の夜風は防ぐものの、依然として冷え切ったままだったが、しかし火照った身体にはちょうど良いくらいだった。
総司の白濁したものを高ぶる俺自身に塗る。これで少しでも痛みが和らいでくれればいいが、と願いつつ俺はそれを固く閉ざしたそこにあてがった。
「総司、力を…抜け」
「ん…っ」
自分にはわからない感覚だが、総司は必死に俺を受け入れようとした。そして少し無理をして押し込むとそのなかは思った以上に熱く、そしてきつく締めつけていた。
「あ…あ…」
「痛いか?」
俺の問いかけに総司は首を横に振って答えた。しかしそんなはずはないだろう。顔を顰めて何か耐えるような表情をしていた。
「もう少し…我慢してくれ」
俺の懇願に総司は頷く。そして俺はなかに一気に押し込んだ。
「あっ、あぁ……ん」
「…っ、総司」
これが総司の中だ。熱くて、千切られそうなほどきつくて、でも生々しい。
総司と繋がっている。誰も触れたことの無い場所に、俺が触れている。俺の興奮は、かつてないほど大きく膨らんだ。
だが、俺が満足しているだけでは駄目だ。
「大丈夫か…?」
俺は身体を制止させたまま訊ねると、総司は
「大丈夫です…だから…」
と答えて、その指先を俺へと伸ばしてきた。俺はその指先に自分の手を重ねた。そして「わかった」と答えてやる。
「気持ちよくしてやる」
お前が求めるなら、もっと気持ちよくしてやる。
この夜を、一生忘れさせないくらいに。
俺は総司の両足を掴み、そこを突き上げるような格好にさせた。そして腰を使い、激しく出し入れを繰り返した。
「あぁっ!あぁ、あぁあぁぁ…っ」
俺に翻弄される総司は声を上げて善がる。声は部屋中に響いてこだました。しかし途中から手で口を塞ぐようにしてその声を抑えようとする。俺は咄嗟にその手を総司の頭上に固定させて
「聞かせろ」
と命令した。きっとこの声は家の外まで漏れてしまうことだろう。女のそれではない低い声を聞けば、男同士の交わりだということを知られてしまう。
だが、そんなことはどうでもいい。
(俺は…お前を、抱きたい)
俺だけのものにしたい。
「ふぁ…っ、あ、歳三さん…!」
「くそ…」
足りない。
全然足りない。
俺は一度、そこから抜いて総司の身体を反転させた。四つん這いにさせて尻を突き出すような格好をさせる。さすがに総司は
「やだ…」
と抵抗する素振りを見せたが、俺が双丘を掴み開かせて、そのなかにまた俺を入れると、声を上げて受け入れた。
パンパンと俺をぶつける。あまりに激しい動きに翻弄されて、総司は力が抜けたのか上半身は既に畳に縋る様になってしまっている。
俺は総司のそこにふれた。一度いったばかりだが、そこにはすでに力が入っていて濡れそぼっている。
「や…はず…かしい…!」
俺はまた高ぶっているそれを扱いてやった。双方からの刺激に総司はもう何の抵抗もできないようだ。
「ふっ…あぁ、あぁ…ぁぁ…ん」
「総司…っ」
背中から身体を重ねる。一番奥と、高ぶった場所、そして胸の飾りを痛いほどに抓り、総司の身体はびくびくと跳ね上がった。
「とし、ぞ…さん、もう、もうも…、駄目…」
「いくか…?」
「んっ、ふ…あ…あぁ」
俺はすべての場所を強く刺激してやる。
もっと、気持ちよくなって、満たされて、いけばいい。
すると俺の思い通りに、総司の興奮は絶頂に達し、声を上げて精を吐き出した。
(くそ…)
総司が達したので、俺を受け入れている場所がきゅうっと締まる。すでに総司以上に興奮しきった俺も、そのさらに狭くなった場所に押されるように、吐き出した。総司の奥が生暖かい熱とそして俺のもので埋まる。
「…総司…」
くたっと力なく身体を横たえた総司から、俺は自分のものを抜く。興奮さめ止まぬそれはまだ高ぶっていたが、総司はさすがに身体の限界のようでうっすらと目を開けて、荒い息を繰り返していた。
「大丈夫か…?」
汗で濡れた髪を掻き、俺は総司の輪郭に触れる。すると総司は頷いて、ゆっくりと身体を起こすと思わぬことを言った。
「歳三さん…まだ、足りない…」
「え?」
総司は俺のまだ力が入ったままのそれを両手でつかんだ。
「く…っ」
「これ…入れて…入れてください…」
「何言ってるんだ…」
ただでさえ初めてのことで身体は疲れ切っているはずだ。それなのに総司は気だるげなままに、ゆっくりと俺のものを舐める。
「総司…」
抑え込んだはずの欲望が、また顔を出す。総司が呼び起こしていく。
「歳三さん…お願い、これ…欲しい」
「…お前、正気か?」
身体を重ねる前では考えられないようなセリフだ。これが夢だと言われる方がまだ現実味があるくらいに。
しかし俺は気が付いた。
(まだ…忘れられないのか…)
総司の記憶に、手に、身体に、まだその感触が残っているのだろう。だから、忘れさせてほしいと総司は懇願しているのだ。
「もっと…おかしくなるくらい、してほしい…」
くらくらする。
興奮に酔っているのは俺の方だ。
俺はその言葉を聞いてすぐに、総司を押し倒した。荒々しく総司の足を持ち上げて、その奥の場所に遠慮なく指を差し込む。すると俺のもので濡れそぼったそこはひくひくと俺の指を飲み込んだ。
もっと欲しい、というその言葉通りに。
「後悔しても…遅ぇからな…」
泣いてやめてほしいと懇願しても、もうやめてやらない。そう俺が言うと、総司はそれでいいと言わんばかりに何度もうなずいた。
総司の欲求の根底にあるのは、悲しみなのだろう。それを埋めてほしい、その道具としての交わりなのだろう。
(それでもいい…)
めちゃくちゃにしてやる。
お前が望むのなら、いくらでも。
「…こっちにこい」
俺は総司から指を引き抜いて、強引に腕を引いて立ち上がらせた。身体に力が入らない様子の総司を無理矢理に立たせて、俺はその身体を壁に押し付ける。
そしてその双丘を再び割って、後ろから俺を押し込んだ。
「あぁあ…っ」
「これが、欲しかったんだろう…っ?いくらでもやるから、受け取れよ…!」
「あっ、あっ、とし…ぞ、さん、…っ!」
総司の脚はがくがくと揺れていた。身体に力が入らないようで、壁に身体を押し付けてようやく立っていられるような状況だ。しかし俺はそんな総司に構わずにさらに奥、奥へと俺を押し込んだ。
総司のあられもない声と、卑猥な音が部屋中に響く。総司は涙を流してまで興奮し、そして俺を受け入れつづけた。
次第に身体の奥の良い場所を見つけた俺は、執拗にそこを攻め立てた。新しい刺激はさらに総司を戦慄させ、ただ興奮に酔い欲求に素直なだけの野性になっていく。
そしてそれは俺も同じだ。
「総司…っ、総司、総司…!」
ただ名前を呼び続ける。
ずっとこうしたかった。抱きたかった、繋がりたかった、俺だけのものにしてしまいたかった。
そのすべての欲求を、行為にぶつけた。
「あぁ、もう、もう…!いく、いく、いきたい…!」
「いけ…何度でも、いけって…言ってるだろうが…!」
「ふぁ…あぁぁ…っ」
俺は総司のたかぶりを扱きあげて精を吐かせる。もう三度目になるのに、痙攣したそこからはドクドクと生暖かいものが流れ出た。
(駄目だ…足りねえ…!)
しかし、俺はもう総司の中でいくだけでは満足ができない。
そこで部屋の障子を開けた。庭と繋がるその障子をあけると、声は瞬く間に外に聞こえてしまうだろう。もちろん総司もそのことに気が付いてはっと両手で口を塞いだ。
「んっ、んぅ!んぅぅぅう…ッ」
声を漏らさまいと必死に耐える総司が、可愛くて仕方ない。愛しくてどうしようもない。
「としぞ…さん、」
涙を流して煽る総司に、俺はまた二度目の絶頂を迎える。
すぐ外に誰かがいるかもしれない。そんな背徳感は何の意味もなく、むしろ俺を興奮させる材料にしかならない。
誰でもいい。
見せつけてやりたい。
「く…ッ!あ…」
俺は総司の双丘を掴み、そしてその中に俺を流し込んだ。そしてそのままその場に総司と一緒に倒れこむ。繋がった場所から総司のものか、俺のものかもわからない、ドクドクとした鼓動が脈打つ。
「歳三さん…」
「まだ、足りないか…?」
俺はそこを繋げたまま総司に訊ねる。
お前が望むならまだ続けてもいい。お前が望むようにしてやる。
すると総司はふふっと笑って
「もう無理です…」
とほほ笑んだ。俺はふっと息を吐き「そうだな」と頷き、そこから俺のものを引き抜いた。どろりとした白濁の液体が生々しい行為を印象付ける。
俺は開けた障子を再び閉じた。そしてそのまま総司と共に横になる。
すると総司はすぐに目を閉じて、そのまま寝息を立て始めた。大津から帰ってきて、緊迫感ある時間を過ごし、そしてこの夜更けの激しい行為でもう限界だったのだろう。
しかし俺はそんな風に寝てしまった総司を見て安堵した。
「ゆっくり…」
寝ていればいい。
全てを忘れるくらいに。






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