擦れた声 ―わらべうた369.5―




「…っ、んぅ、ぅ…」
貪るような口付けのせいで身体の芯から沸騰するように熱くなる。頭がくらくらして、指先が痺れて、足の力が抜けた。口腔をかき回す土方の舌が、総司の舌と絡まり歯列を舐めてすべて融かしていく。
ようやく唇が離れたときには、だらしない唾液が二人の間を橋渡ししていて、
「歳…ぞう、さん」
総司の声は擦れていた。
「何だ?」
「近藤…先生が、帰ってきたら…」
「帰って来ねえよ。今日は深雪とお楽しみだ」
「そ…っ」
それはそうかもしれないけれど、と抗おうとしたものの、土方は袴の紐を解いてそこに在るものを激しく掴んだ。
「ん…っ!」
「こんなに固くしてるくせに…他のことを気にしている場合じゃねえだろう?」
「や…、もう…!」
恥ずかしいことばかりを口にする土方に、総司は思わず顔を背けた。いつまで経っても羞恥心は消えようもない。
明里とのやり取りを簡単に土方に伝えた。土方は「ふうん」と興味が無い様子で聞いていたけれど、本音は彼女の穏やかな決断に安堵したはずだ。
「歳三…さん」
「ん?」
「良かった…ですよね」
何が、とは言わない。言わなくても、土方にはわかるはずだから。
すると土方は何も答えずに、構わず巧みに指を動かして総司の興奮を高めていく。
「あ…っ、あ、あぁ…」
「他のことを気にしている場合じゃないって…さっき、言ったよな?」
「ん…っ、も、もう…」
もう駄目だ、と己の身体のなかの『何か』が弾けそうになる。まるで身体が重さを失って、土方の手の平で浮遊するかのように。
けれど、意地悪な彼は
「ダメだ…まだ、いくな」
と迸りかけたところを固く閉じた。
「んっ…!」
身体がびくん、と跳ねて膝がカクカク揺れる。そんななか、土方が総司の身体をくるりと反転させて後ろから抱きしめるような体勢に持っていき首筋を噛んだ。
「んあ…!」
「ここに…欲しいか?」
耳元で囁かれて、頭がくらくらした。欲望の発散を塞き止められたことで、総司の中ではいつもよりもタガが外れる。
「ほし…い…」
躊躇いもなくそう答えると、土方は一気に自身を押し込んだ。
異物による圧迫、その一方で自分とは違う熱さを孕んだ生々しい感触に、脳天が揺れる。熱と、少しの痛み。しかし要領を得ている土方はすぐに総司のなかの気持ち良い場所を責めた。
「ふぁ…っ、あ、あっ…!」
俯せになって腰を突き出すような恰好は、奥のまたその奥まで届いてしまう。
思わず大きな声を挙げそうになって手を塞いだ。しかし目敏く気が付いた土方は、総司の両手を後ろ手にさせて掴んだ。
「ここは屯所じゃねえんだ。声を…出せ」
「あっ、あぁ…!もう、やだ、やだ…」
「何がいやだって?」
「んう、う…っ」
誰かに聞かれてしまうかもしれない。
いや、たとえ誰も見ていなかったとしても恥ずかしい。
でも
「やめるか?」
その意地悪な質問には「うん」とは言えない。その証拠に、身体は土方の思うままに開いてもっと欲しいと叫んでいる。
「…やめ…」
「何…だって…?」
でも、彼だって同じはずだ。
「…やめないで、ください…」
その声がいつもより熱くて、擦れていて、妖艶で。
自分を求めているのがわかるから。







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