わらべうた397・5 −野分−






秋の夕暮れが夜に変わる。冬が近くなり、日はどんどん早く暗がりを呼ぶものの、今日ほど一日が早いと思ったことはない。
「ああ…っ、ん、ぅぅ…!」
纏う衣ひとつ与えられずに裸のままで、総司は畳に上半身を落とし腰だけ土方に持ち上げられていた。獣のような格好に羞恥心を感じていたのは最初だけだ。
「もう…降参か?俺の好きにしていいって言ったのはお前だぞ」
土方は少し笑うように総司に問うたが、その答えを待つことなく総司の奥へ奥へと何度も自身のそれを流し込む。
抱いてほしい…とそういったのは総司からだ。けれどこんなにもずっと翻弄され続けるなんて思ってもいなかったのだ。
「…も…だめ、です…って…」
「嘘つけ。ここは…まだひくひく動いている」
「や…だ、もう…」
身体中の力が入らない。頭の先から指の先まで疲労しきっている。わかるのは体の内側から与えられる快感だけだ。
「本当に嫌か…?」
「…っ、もう、だって…無理、だ…って…あぁっ!」
言葉を遮るように、土方が総司自身のモノを握った。もうだめだと口にしていてもそこだけは固く力が入っている。
「ここは…まだ足りないって言ってる」
「んっ、あ、ああぁ…」
彼の指先が何度も擦る。熱を持っていく体は嘘をつくことができずに、もっと欲しいのだとねだる。
「あぁ、あああぁ…」
土方に従順な身体が何度目かわからない絶頂を迎えようとしている。がくがくと膝が揺れ、腰を突き上げるようになったので土方もそれに気が付いただろう。
「…いくのか?」
「うぅ…い、いく…ぅ…っ!」
もういく、と思ったその時。
「…っ、ぇ…?」
土方は突然その手を放した。てっきりそのまま快楽へと誘われるのだと思っていた。
「と…歳三さん…」
「こっち向け」
それまで縋るように畳に落としていた上半身をくるりと反転させられる。そして土方は既に薄暗闇になった部屋に灯りをともした。
「歳三さん…っ」
総司の身体はその発露を失い小刻みに揺れていた。与えられたもどかしい感覚が身体中を駆け巡る。
しかし土方は微笑んだだけで続きをしようとはしなかった。
「…な、なに…」
「足、開け」
「…っ」
「いいから…自分で触って、俺に見せろ」
いつもなら「嫌だ」と頑なに拒んでいただろう。自分で自分を慰めている姿など、土方にだって見られたくはない。しかし絶頂の寸前まで興奮させられた体は、そんな理性すら見えていなかった。
「…っ、う、うぅ…」
総司は足を開き、興奮する自分を見せつけるようにそこにあるものに両手を伸ばした。そしてさっきまで土方が触れていたように自分でも触れる。
「あ、ぁぁ…あ、あ、…っ」
土方がしていたようにうまくはできない。たどたどしい指先だったが、土方に見られているというその事実で身体が熱くなった。
「いやらしいな…見られて興奮しているのか?」
目ざとい土方はそう言って総司を煽る。そして燭台を引き寄せて明るく照らした。
「…だ、って…もう…」
「もっとよく見せろ。お前が…興奮しているのを、見たい」
「…っ、ぁ、灯りは…やだ…」
「いいから…もっと足を開け」
強引な土方は総司の足を開かせると、さすがの総司も羞恥心にあまり顔を逸らす。
「い…意地悪…!」
「ああ…そうだな」
「…っ!」
土方は総司の手を払い、その高ぶった魔羅を彼自身の口で包んだ。生暖かい、ダイレクトな感触。
「あ、あっ…とし、ぞ…さん…!」
「ああ…大きくなってきた…」
「っ…いく、いく…いっちゃうから…ぁ!」
もう何度も吐き出したというのに、身体はまるで初めての感覚だというように痺れて、震えて、そして吐き出した。
「ああ、…ぁぁぁ…」
呆気なく、土方の口の中に吐き出した。息を荒く呼吸を繰り返す総司を土方は見て
「お前の精は…甘いな」
と口を拭った。彼の口の中でいま何が起こっているのか…考えるだけで恥ずかしさでいっぱいになる。
「そういうことを…言わないで…」
「…お前はそういう顔を俺以外に見せるな」
「そ…そんなの…」
(言われなくったって、見せる人なんていない…)
そう言いかけたが、すぐに土方が総司の両足を抱えた。自分の方に引き寄せて、そして今度は熱く反り立った自身のモノを押し付けた。
「…っ、歳三さん…」
「入れる」
土方は短く告げると、一気に押し込んだ。息が詰まるような感覚に、一瞬頭が真っ白になる。
「あ、あん、ああぁ…!」
「お前、奥が…好きだよな」
「ぅぁ…あ、あぅ、あぁ…」
「それからここを抓ると…もっといいんだ」
土方の指先が総司の胸の飾りに触れた。そして強く抓る。
「も…歳三さん…!あ、ああ…!」
「なかが…締った…」
部屋中に響く卑猥な音。
あられもない自分の声。
そのすべてを知っているのは、目の前の彼しかいない。
(きっともう…身体中に、刻み込まれているんだ)
そしてまた。
(歳三さんのことをこんなにも知っているのは…僕だけだ…)
もう彼以外の誰とも、こんな風な感情に飲み込まれることはないだろう。
まるで秋の嵐のような彼の激情が、僕を攫っていく――。







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