憂鬱なアイロニカル【裏】 わらべうた976.5
島田先輩は僕が金子邸の使われていない納屋へ誘うと、戸惑っていた。
「ちょ、ちょ…いや、さすがに世話になっている身で…」
「じゃあ茶屋ですか?でもこの辺りにはありませんし、屯所を離れるのは気が引けます。でも部屋は隊士でいっぱいだし…ああ、僕は外でも構いませんが」
「外?ダメに決まっているだろう!」
先輩が顔を真っ赤にして声を上げたので、僕は「しーっ」と子供にするように諫めて納屋へ先輩の背中を押し込んだ。
天井の高い納屋の窓から淡い月明かりが差し込んでいる。どこか神秘的な今宵は何もかもを包み込んで、こんな場所なのに僕たちをその気にさせてしまう。
人目がないとわかると、僕たちは激しく抱きしめ合って口づけを交わした。先輩は(こんなところで)とまだ戸惑いがあるようだったが、僕は場所なんでどうでも良くて早く肌を重ねたかった。
「さ、寒くないか?」
「大丈夫です」
僕は即答して袴の紐を解き上着を脱ぎ捨てた。先輩はまだ戸惑っているようだったので、僕は先輩の肩を押してその胸板に馬乗りになった。
「…先輩、触ってください」
「あ、ああ…」
先輩の指先が辿々しく動く。まるで初めてのような戸惑いがあって、でもそれが僕にとってはもどかしくて急かすように先輩の下肢へ手を伸ばして熱くなったそれを握った。
「っ、やま…!」
「こんなに大きくなってるのに…どうしてもっといつもみたいに激しくしてくれないんですか?」
「…いや、久しぶりだから労わろうと…」
なんとも先輩らしい気遣いで、僕は小さく笑ってしまう。久しぶりだから僕は早く欲しくて納屋に連れ込んだのに、先輩はそんなこと気がつくことはないだろう。
「久しぶりですけど、僕はずっと自分でここを慰めてました」
「な…」
「先輩のコレを思い出して…一人でしていたんです。だから早く欲しい、そして激しく突いて欲しいんです」
僕は羞恥心なく先輩に伝えた。さっき先輩が『悩んでいることは話せ』と言ったので、先輩がわかってくれるように打ち明けたのだ。
先輩は固まってしまったので、僕は先輩のものをあてがって腰を落とした。
「あっ、あー…」
「…やまの、」
「良いです…とても、気持ちいい」
全身を突き抜ける限界のない快楽???それは飲み込めば飲み込むほど貪欲になる麻薬のようだ。
僕は体を上下してユサユサと先輩に跨って動いた。先輩も頬を紅潮させて久しぶりの感触に酔っているように見えたので、僕は(もっと、もっと)と膝ががくがくするほど腰を振る。
悩んでいたことが馬鹿らしくなるほど、野生に身を任せれば何も考えられなくなる。わかるのは先輩と繋がっているということ―――それだけで何もかも解決してしまう。
「あっ、いい、奥、すごい…っ!」
人気のない場所にある納屋だけれど、静かな夜なので声が響いてしまう。けれど僕はそんなことすらどうでもいいと言わんばかりに嬌声をあげてしまった。
「あっ、あっ…っ、もう、いっちゃう…!」
僕が耐えきれずに絶頂を迎えようとすると、今までされるがままだった先輩が急に僕の腰を掴んで身体を起こし、逆に押し倒されてしまった。急なことで僕は驚いた。
誰にも優しい先輩はもうそこにはいない。獰猛で野生味溢れる先輩が僕を見下ろしていた。そして僕のモノを強く握って吐き出させないようにした。
「あっ、もう…!だめ、だめです、いく…」
「だめだ、まだ我慢しろ」
「そんな…!」
もう達しようとしていたのに出口を塞がれてしまい、僕は切ないまま唇を噛んだ。先輩はそのまま構わずに奥へ奥へと突いて僕は何が何だかわからないまま悲鳴をあげた。
「アッアッアッ…!せんぱ、もう無理…っ」
「煽ったのに、辛抱が足りないな。さっき奥まで突いてくれと言っただろう」
「だって、だって…気持ち良すぎる…っ」
僕は涙を滲ませて早く吐き出させて欲しいと懇願するが、先輩は聞き入れない。
「…っ、一人で慰めてたって?何を想像していたんだ」
「あっ…そ、それは、あっぅぅ!」
「そんなことをする必要なんでないだろう。俺はこうやって…いつも抱きたかったのに」
先輩は少し拗ねたような顔をしていたので、僕は先輩の首の後ろに手を回して口付けた。
「山野…」
「せんぱい…いかせて、おねがい…」
僕が耳元で囁くと、先輩はカアっと顔を赤くして僕を抱きしめて腰を振った。
「あっあっあっ!あー!」
僕はようやく解放されて精を吐き出したが、その後も先輩に奥深く突かれて、ずっと身体中が痙攣しているかのように震えていた。背中を反って足を開きあられもない姿で悶えても何の羞恥心も感じないほど夢中だった。
そして先輩が果てたあと、僕は納屋に差し込む月明りをぼんやりと眺めながらほとんど無意識に呟いた。
「どうして…こんなに気持ちいいのかな…」
すると僕の隣で仰向けになっている先輩が小さく笑った。
「俺がお前のことを愛しているからだ」
「……そうですね」
先輩は時折素直過ぎて、僕は困惑してしまう。けれど裏表がない人だということがわかっているからこそ、先輩の言葉を疑うことなく受け入れることができる。
(僕はずっと一緒にいたい)
僕は願うように目を閉じて、先輩の腕枕のなかで身体を丸めた。
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